ドイツ、シリア人にダブリン協定適用せずと表明
2015/08/30
まじゃるです。
少し前の話ですが、8月25日にドイツ政府は、シリア人にはダブリン協定を適用しないと表明しています。(独、シリア難民の受け入れ要件緩和 EUで初(Yahoo!ニュース/日本語)、ハンガリー語のソースはこちら)
ダブリン協定とは、難民申請を1カ国に限定するもので、移民流入の入口となる国々に大きな負担を強いるものであり、また移民が不法入国を試みる原因でもあります。
ドイツがシリア人にダブリン協定を適用しないことで、ハンガリーでどのような変化が起こるか考えてみます。
シリア人の不法入国が減る
シリアのパスポートを所有している人は、ハンガリーに不法入国、すなわち国境のフェンスを突破する必要はなくなります。ハンガリーで難民申請をしたのちに、真の目的地であるドイツへ行っても、ハンガリーに送還されなくなったからです。
シリア人は、国境のイミグレーションで難民申請をすれば、原理的には、身柄を拘束されること無く、難民キャンプに直行できるはずです。(ただしハンガリー入国管理局が対応準備出来ていればですが。)さらに、ハンガリーで難民認定されるのを待つことなく、ドイツへ移動することになるでしょう。(8月30日追記)ただし合法的にEU他国へ移動するためには、パスポートの他にビザが必要。(ソース)
また現在、不法入国者の一時収容キャンプが過密になり、テントに火をつけて脱走を図るなどの事件も発生していましたが、シリア人を収容する必要がなくなれば、その人数分だけ収容所の状況も緩和されることになります。
他国の移民はどうするか
シリア人以外の移民は、「パスポートを紛失した/取得していないが、自分はシリア人だ」と申告してくるでしょうが、ハンガリー国境では(たとえ本当にシリア人であっても)身元が明らかでない人たちは突っぱねられるでしょう。
よって今後も、移民たちは、ハンガリーへの不法入国を試みた後に、ドイツを目指すと考えられ、ハンガリーでは、不法入国者/難民申請者への対応(国境警備、密入国ブローカーの摘発、難民キャンプ設営など)が必要になります。そのための支援をEUに求めていくと考えられます。
長期的に見ると
現在、周辺国へ逃れたシリア難民は400万人を超えており、また国内避難民も760万人いるそうです(ソース)。これらの人々もドイツを目指す移民となり得ますが、現時点では、これを避けるための方策が立てられておらず、EU全体の移民政策を策定することが必要です。
ハンガリーの移民政策は、EUレベルの方針がまとまれば、それに沿うことになるでしょうが、逆に、まとまらなければ、国際法に反しない範囲で、ハンガリー独自の政策を推し進めていくことになると思います。今後、EU各国の足並みが揃うかに注目です。
まじゃるでした。